もちろん音を聴いた後はは酷いなんて言わず、既成概念外の体験は、相当意外な経験をしたと思っていたようですね。
これなんかも、高剛性高質量主義を主張してきた私がすること自体、自分でも驚くほど的外れだったわけで、今まで語られてきたオーディオの常識がすべて正しいとは限らない一面を表しているのでしょう。
常識のある健全なオーディオマニアならこんな非常識な鳴らし方などは絶対しないでしょうし、不健全極まりないと一蹴してしまうところですが、機械としてみればダンボールズペシャルはどうしようもない物かもしれませんけど、見た目が惨い楽器としてみれば、さっぱり役立たずというわけではない事を、先の営業マンの方に教えられたようなものです。
さて今回のお話ですが、少し前に何度かに分けてご紹介してきた、YAMAHAGT2000のYSA-2というトーンアーム改造の続編になります。
といっても見た目が変わったという話ではありません。
一連のトーンアームパイプに関しては、純正の真鍮メッキ仕上げのパイプ、純正の2倍の肉厚を持つ汎用のアルミパイプ、そしてドライカーボンのパイプ、最後にオーディオテクニカのヘッドシェル加工装着という流れでお話してきました。

パイプ単体で言えば、純正パイプはチーンと高い音で響く感じで、メッキの影響か質量の影響かはわかりませんが、低い周波数の共振も混在しているような一面がありました。
元々純正アームの場合は中にナイロンのガイドに差し込まれた、4本の内部配線用の銅線の単線が入っていましたが、私はカートリッジから端子まで無接点化するためにそれを抜いていますので、もしかしたらその単線が共振を抑えていた可能性があります。
ただ無接点化後の一皮向けた世界を聴いた限り、純正に戻す気など起きなかったものです。
しかしこのアームパイプに関してはだいぶ前から気にはなっていたところなのですが、正直不満もなかったためそのまま放置していたのです。
そこで純正アームの共振を抑制する実験を始めたのです。

結果的にその実験を繰り返すうちに、以前バイクの軽量化をするためとして、ステー製作のために購入していたパイプ類の残骸が出てきたので、寸法を測ったところアームパイプとして使用できそうだったので改造を始めたのです。
各パイプの変更の様子は以前のブログを参照してもらうとして、現在のカーボンパイプが圧倒的によかったものの、良い面を持ちながらも採用されなかったアルミパイプも、純正よりもはるかに良かったのです。
実際現在の仕様は改造前の純正時とは比較にならないほど次元の高いクオリティーですが、前回パイプ付け根のネジの増し締めを行ってさらに音が変わった様子から、もう少し剛性アップ出来ないものかと考えていたのです。
手持ちの細いパイプを見てみると、ストンとカーボンパイプ内に入れられる真鍮パイプがあったのですけど、これだと緩すぎるので、内部にエポキシを流し込んで固定しようかなどと考えていました。
もうひとつほかにアルミパイプがあったのですが、これは入らないだろうと思っていたものでしたけど、試しにねじ込んでみると入るではありませんか。
そこでアルミパイプ表面にエポキシ系のアルミパテを塗り、カーボンパイプにねじ込みました。

右側がはじめのテストで使用したカーボンパイプで、左が現在の仕様にアルミパイプを挿入したもので、見てのとおり誂え品のようにジャストサイズ。
これでパイプ単体の剛性はさらに向上するはずです。
ただ心配なのは異種材質の組み合わせによる共振の発生や、逆に制震の度が過ぎてしまい、つまらない音になってしまったり、音がぼやける心配です。
ともあれエポキシが固まるまではしばらく放置。
そして緊張の初音だしとなりました。
視聴用のレコードは例の再生困難レコードであるブラムースのアルバムです。

口があんぐり開いて、頬が弛んでにやけてしまいました。
初っ端から断然透明感が違い、不要共振が抑えられたからでしょうか、微弱な弱小音の再現性が桁違いの激変。
さらに音に対する陰影感が出てきて、とても実体感のある音になってます。
もはや音質劣悪レコードというより、ごく普通の複雑な音が混ざるレコードです。
このアルバム、以前に何度か世界の名機といわれるプレーヤーをお持ちの所で鳴らしたことがありますが、正直透明度やスピード感、解像度など、すべてにおいてうちのGT2000レベルで鳴らす事ができないほど、アナログ泣かせの曲者なのです。
それだけプレーヤー関連の素質を試すのには最適なのです。
さてさてそんな音に気を良くした私は、次々にレコードをかけてみましたが、どれも今まで聴いた事がないようなレベルで再生できています。
透明感やスピード感、微弱信号の再生など、どれもすべて繊細に表現しています。
いったいどれだけアナログレコードには情報が入っているのでしょう。
例の激烈粗悪な録音の代表格であるアラベスクのアルバムも、音は悪いものの以前と比べても生き生きと鳴るので、聴いていてまったく不快感も生まれません。

でもこの大きな変化ですが、それをものの見事に再現するAudioNirvanaの実力もひとつかもしれません。

実際音の変化に対する反応のよさではかなり優秀なP610の前期型でも聞いてみましたけど、もちろん的確に音の違いは出してくるものの、オーディオニルバーナ相手では分が悪すぎますね。
しかもダンボールスペシャルのくせにそんな繊細な音の違いを的確に表現できる実力は、やはり只者じゃないユニットですね。
これと比べると、個性的で魅力的な音は聞けるものの、どれをかけても単調な一本調子の世界の名機たちの多くは、世界の迷機に思えてきます。

あまりにも聴いていて気持ちがいいもので、ムーディーな雰囲気で音楽を楽しんでしまいました。
様々なジャンルを問わず、ほんとにこんな快音出すユニットはなかなかお目にかかれないものですね。
という事で今回はここまで。
また次回楽しいお話をしたいと思います。
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